2020-01-01から1年間の記事一覧

日記

文章を書いてみたんだけど何だか釈然とせずパッとしない。それは当たり前のことなので、愚痴を言いたいわけではない。最近なにも書いてないからともかく何でもいいから書いてみようというだけの動機でいきなり書き始めてそんな事でおもしろいのが書ければ世…

全ての日

緑色の砂漠だった。月に照らされて透き通った海のようにさらさらと耳に鳴る。まるで夢の縁に立っている思いだった。この煌めく緑の砂すべてが、ケムミァーンの父祖たちであるのだろうか。 ケムミァーンは氷から生まれたと聞かされていた。本当のところは知ら…

セブン小僧

浮遊エビの透き通った脚を見つめるうちにすっかり上の空になって、黄枝誘(さそい)の話をまるきり聞き逃してしまった。 ひとつの世界にチューニングを厳密に合わせ続けるのは私には難しいことで、大まかに固定することはできるにしても、気がつくとすぐに振…

犀の顔をした仏

犀の顔をした仏様がこの病院にはいらっしゃる、と祖母は白い光、白いカーテンとシーツに覆われた白い顔で訴えた。その手は薄汚れた包帯のように力なくベッドにわだかまり、薄暗い影をつくっていた。ブラウン管に映ったノイズまじりの映像や、とぎれとぎれの…

手すさび1

影には、影との約束がある。誰しもが忘れたものを影は忘れていない。日が傾くにつれ伸びてゆく影は、人が触れたものに指紋を残してゆくように、見る者の心に、その約束を少し残してゆく。それで人は首をひねる。静けさ以外に、騒がしいものは何一つないのに…